この度、2020年1月から広島大学病院遺伝子診療科の主任診療科長を拝命しました。
当科の前身、遺伝子診療部は2002年に産科・小児科遺伝カウンセリングの検討ワーキングとしてスタートし、2003年に設置されました。2019年より開設以来初めて専任医師(特任教授)が着任し、2020年1月に遺伝子診療部から遺伝子診療科に移行しました。これまで遺伝子診療部の発展に貢献された多くの先生方の功績を引き継ぐことになり、その責任の重さに身が引き締まる思いです。
遺伝カウンセリングを必要とする疾患は多岐にわたっています。現在、スタッフは脳神経内科、小児科、小児外科、産婦人科、腫瘍内科、眼科、耳鼻咽喉科など診療科に所属する15名の臨床遺伝専門医(併任)が幅広い領域に対応できるように協力体制を築いております。また臨床遺伝専門医をめざして研修中の専攻医が34名在籍しております。遺伝診療科の専任スタッフには、認定遺伝カウンセラーが2名、助産師兼コーディネーターが1名、医療事務2名、データ管理部門スタッフ2名を加えた8名の専任スタッフが中心となって遺伝子診療を行っております。
遺伝子診療部の創設当初から行なわれてきた周産期遺伝カウンセリング(出生前診断)、小児期遺伝カウンセリング(先天性疾患)、成人期遺伝カウンセリング(神経疾患や遺伝性腫瘍)の領域においては、今後もこれまで以上に充実させていきたいと考えております。また新しい領域として、2019年6月より保険診療となった「がんゲノム医療」の統括部門として院内体制整備を行なっており、同年9月には「がんゲノム医療拠点病院」に指定されました。多職種の協力と診療科横断的な取り組みによって、がんの領域における新しい診療体系を構築し、当院ならびに当院と連携するがんゲノム医療連携病院の患者さんやそのご家族に最先端の治療を届けることを目標に、今後益々充実させていきたいと思っております。
近年、遺伝子解析技術の飛躍的な進歩により、ゲノム情報が安価に手に入るようになり、これまで解明が困難だった病気の診断や治療が可能になりつつあります。一方で、研究的側面をもつゲノム医療においては、社会との接点の諸相で生じる課題が多岐に及び、ELSI(エルシー)と称される倫理的、法的、社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)が大きな問題となってきており、患者さんやそのご家族には心理的な影響も大きいため対応を十分に考慮する必要があります。
当科では、最新の遺伝子診療を遺伝カウンセリングなどによって提供し、患者さんやそのご家族に役立てていただくとともに、遺伝情報の特殊性を鑑み、医療関係者はもとより一般市民における遺伝リテラシーの向上に寄与していきたいと考えております。
教授、遺伝子診療科長
檜井 孝夫
HINOI, Takao
役職
教授、遺伝子診療科長
専門資格
- 日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医・指導医
- 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
- 日本外科学会外科専門医・指導医
- 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医
- 日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
- 日本透析医学会透析専門医
- 日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医
主な所属診療科
- 遺伝子診療科、消化器外科